寝室の壁から眠りを測るレーダー、Somilyが変える睡眠計測

寝室の壁から眠りを測るレーダー、Somilyが変える睡眠計測

ニュースの概要

米Xandar Kardianは、寝室の壁に取り付けて眠りを測る一般消費者向けの機器「Somily」を発表しました。ベッドの上の壁からレーダー波を出し、布団越しに胸のわずかな動きを読み取ります。そこから睡眠の状態、心拍数、呼吸を追跡する仕組みです。腕時計型の機器もカメラもマイクも使いません。同社のセンサーはもともと医療機関向けにFDA(米食品医薬品局)の認可を受けた技術で、今回はそれを家庭へ持ち込む位置づけです。装着の煩わしさや、撮影されることへの抵抗感を避けたい人に向けた製品といえます。

引用元: Xandar Kardian、非接触レーダー睡眠トラッカー「Somily」を発表(Business Wire)

分析・見解

布団越しに胸の動きを読む、レーダー計測の仕組み

Somilyが使うのは、電波を当てて跳ね返りを調べるレーダーです。呼吸で胸が上下すると、反射波の位相(=波の山と谷のずれ)がごく小さく変わります。心臓の拍動による振動はさらに小さいのですが、信号処理で呼吸成分と分けて取り出せます。布団は電波をほぼ通すため、寝具の上からでも測れます。

この方式の利点は、本人が何もしなくてよいことです。時計の充電も、寝る前の装着も要りません。睡眠計測で最も多い失敗は、続かないことです。外す、充電を忘れる、違和感で眠れない。この三つを仕組みごと消せます。

医療機器の技術が家庭に降りてくる意味

非接触レーダーは、病院や介護施設で転倒や呼吸停止の見守りに使われてきました。そこで求められるのは精度と信頼性です。家庭向けの睡眠機器の多くは、精度より手軽さを優先してきました。医療向けで鍛えた技術を寝室に移す今回の動きは、この順序の逆転といえます。

似た流れは過去にもあります。血中酸素を測るパルスオキシメーターは、医療現場の道具から家庭の健康機器に広がりました。コロナ禍の自宅療養で一気に認知が進んだ例です。睡眠でも、医療由来の信頼を看板にした製品が増えると見ています。

強みの裏にある限界、同じベッドで二人が眠る場合

非接触には弱点もあります。一つは複数人の分離です。夫婦で同じベッドを使うと、二人分の胸の動きが混ざります。壁の位置や角度で切り分ける工夫は必要で、ここが実力の差になります。もう一つは寝返りや布団のずれによる信号の乱れです。さらに、レーダーが測れるのは体の動きであり、脳波ではありません。睡眠の深さは推定にとどまります。睡眠段階を厳密に知りたい人には、脳波を測る検査が今も基準です。

見守りと睡眠改善の境目が市場を広げる

カメラを使わない点は、プライバシーの面で大きな武器です。寝室は最も私的な空間です。映像を撮らない機器なら、高齢の親の見守りにも、子どもの呼吸の確認にも受け入れられやすくなります。睡眠の質を上げたい人向けと、家族を見守りたい人向け。二つの需要が同じ機器で重なる点が、この製品の面白さです。

ビジネスへの影響

睡眠関連サービスは、データの入口が変わる

サプリメント、寝具、腸内環境検査などの睡眠関連事業にとって、毎晩の心拍と呼吸の記録は貴重な材料です。利用者が装着を続けなくても、寝室に置くだけでデータが貯まります。たとえば入眠改善の乳酸菌飲料を売る企業なら、購入前後の睡眠の変化を客観的に示せます。広告の主張に根拠を持たせる手段として使えます。

導入を考える企業が先に確認すべき三点

第一に、精度の検証資料です。医療向けセンサーの認可があっても、家庭向け製品の睡眠推定が同じ水準とは限りません。提供元に、第三者と比べた結果を求めてください。第二に、データの扱いです。心拍や呼吸は健康情報にあたります。保存先、利用目的、同意の取り方を事前に整理しておく必要があります。第三に、設置のしやすさです。壁への取り付けは賃貸で壁を傷つけられない住まいの利用者を逃します。

小さく試して、自社の顧客に合うかを見る

いきなり大量導入はお勧めしません。社員向けの福利厚生や、モニター数十人の実証から始めるのが現実的です。三か月ほど続けて、継続率と利用者の声を見ます。続けやすさが数字で確認できれば、サービスへの組み込みを検討できます。装着型が苦手だった層に届くかどうかが、最大の見極め点です。

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